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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
庭ハ幽ニシテ夕ニハ接ス五湖ノ賓
戸ハ厰ニ朝ハ迎ウ三島ノ客
と、左右一行ずつの詩句が読まれる。
「……おい、お客さんよ。そんな顔して、その聯が読めるのかね」
門を掃いていた宿の若い男が言った。
「読めなくてさ……」と、いまいましげに、楊雄が逆にたずねた。「なかなかいい書風だが、これは一体誰の字だい?」
「祝朝奉さまのご直筆だよ」
「書家かね」
「冗談じゃない。このあたり三百里四方きッての、荘のおあるじだアね。つまり地頭の大旦那さまだ。よく拝んでおきなせえ」
「はははは。こんな宿屋は初めてだ」
三人は笑いながら部屋へ通った。おおむね当時は自炊ときまっていた。米、味噌、肉、菜、飲みたいだけの酒、すべて現金買いである。
それを旅籠で借りた鍋釜で煮炊きする。
――楊雄はさてと、巧雲の髪から抜き取ってきた釵を出して、前払いの物代とした。そしてさっきの若い男が何か面白そうなので、それをも加えた車座の四人でやがて飲みはじめた。
するうちにふと、石秀は、妙な物に目がつきだした。――厨房(料理場)へ入るてまえの細土間に、ずらと野太刀が十数本ならべてある。気になって仕方がないので、つい若者に訊いてみた。