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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
「オ、女房、お二人さんへまずお礼をいえ。解の兄弟の救い出しに、腕を貸そうと、ご承知してくんなすったぞ」
「えっ、では。……ああ、これで」
「おばさんよ……」と、鄒淵がすぐその傍らから。「そんなにうれしいのかい、おれたちの助太刀がよ。こんな可憐しいおばさんなんて、ついぞ見たことはねえの。なア鄒潤」
「まったくだ。それだけに俺たちにしろ、うんと張合いがあるッてもんだ。叔父貴、いま孫新へ言ったことを、もう一ぺん話してやりねえ」
「おう、じつはおばさん、おれたちの腹もこうなんだ」
と、ここにこの叔父甥二人も、日頃の意中をうちあけた。
というのは、彼らはいま登雲山に、八、九十人の手下を持ち、近郷は避けて当りさわりのない街道で盗ッ人稼ぎをやっているが、元々これが彼らの素志でもない。
山東の梁山泊には、旧友三人がその仲間へ入っている。錦豹子の楊林、火猊の飛、石将軍の石勇、その三人だ。――かたがた、宋公明以下の漢たちの会盟をきき、羨ましくてたまらない。いつかはケチな街道稼ぎなどすてて一党へ身を投じたいと願っていたものの、さて踏ン切りをつける機会もなかったという述懐なのだった。