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にっき

日記

宮本 百合子

27 一九四四年(昭和十九年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 62,807 字 · 126 页

青空文庫

二月十七日

ということを知らなかったというのは、うらやましい力だと思う。パヴロフという偉大な生理学者の追求のしかたの「パヴロフ式」な工合は、セザンヌの「セザンヌ風」と似ている。理論をもち自身の体系をもち、洞察をもち、対象に直角に迫るところ、根づよいところ、手をゆるめぬところ。

二月十七日(木曜)

昨夜井上園子、咲ゆく。チャイコフスキーのコンチェルト。落ちている、という。上手は上手だけれど、落ちているわねえ。ここに急所がある。今どきの芸術は、殆ど皆上手だが落ちているという落ちかたをしているのだ、文学も。つまりまともさが失われて来ている。マトモサとは何か。対象に正確につき入っていず、意識して、又は無意識に斜っかいにずらしているから。まともさというものは正確正直な追求以外にはあり得ないのだ。下手な縫いての縫いめは、いつもはすかいに流れている。上手は向い側にキュッキュッと真直に近くささっている。

八頁。

運送や来ず。到頭日曜日に宮本にたのむことになる。そしてS、第一ホテルに其までいる。夕飯のべん当をもって四時半すぎ出かけた。

〔欄外に〕

はっきりしない天気

自分の風邪気さっぱりしない。