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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

05 一九三八年(昭和十三年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 229,387 字 · 453 页

青空文庫

六月十九日

では又

六月十九日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 山口県島田より(封書)〕

六月十五日  第二十九信 第三信(島田から)

西洋の人たちは白湯を飲まなかったかしら。――妙なことを考えるわけは、スノウが旅行して行って御馳走になる、鶏の丸煮、丸ムギのパン、キャベジ、ジャガイモ、粟、それを心からよろこんで食べたが、飲むものは熱い湯しかなく、死にそうにのどが干いたといいながら、それには手もふれられなかったと云っている。何と不自由なのだろうと考えて、そして思いかえしてみると、本当に白湯をのんでいるアメリカ人もイギリス人もロシア人も見たことはありませんでした。妙ね。気候の関係でしょうか。(下ではラジオが浪花節をやっている。)

一日のうち何時間、こうやって新鮮な意志の輝きや青春の真の美しさを吸いこむ読書は、何とうれしいでしょう。おりおり感動のあまり頁の上を手で思わずなでながら読んでいます。

十六日 一昨日から昨日の雨は、山陽線の岡山よりすこし手前のところで土砂崩壊による列車テンプクを起し、二重衝突が起って修学旅行に出かけた小学生を多く殺しました。きょうはすっかり晴れて、うちでは満帆を張りひろげたように白い洗濯物を干し、畑ではくさりかけている麦の手入れと始末に大わらわです。