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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

05 一九三八年(昭和十三年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 229,387 字 · 453 页

青空文庫

六月二十七日

いつ着くことやら。出動準備中だそうです。

隆ちゃんまださっぱりせず床についています。疲れも出たらしい。私もすこしあやしいので、今はお母さんの羽織を拝借して着ています。午後からは久しぶりで親密な読書にかえります。

福岡に(入りぐち)おりをという寺があって中気のための名灸がある由、いつか昔、あなたがすすめてお母さんを出して上げたのに、次の朝行かずに戻っていらしたという故事のあるところ、あすこへおつれ申そうかと云っているところです。お母さんには御丈夫な上にも丈夫でいていただかねばなりませんから。おなかはこの気候でも大丈夫でしょうか、呉々お大切に。近ければ一寸かえるのに。では又ね

六月二十七日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 山口県島田より(封書)〕

六月二十六日  第三十二信

さっきから机の上やトランクのところやあっちこっちさがして、がっかりして坐って下から持って来たこのペンで書きはじめました。ペン先を紙に少し包んで持って来たのが、この間野原へ行くとき机の上を片づけ、何かと一緒にまぎれてすててしまったらしい。御愛用の金Gがこの頃益※(二の字点、1-2-22)大切になって来たので箱から分けて来て却ってバカをしてしまいました。