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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
05 一九三八年(昭和十三年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 229,387 字 · 453 页
何という荒っぽい天候でしょう。この間の夜中、グラグラゆれる二階にいて、もう十分だのに。林町では土蔵の白壁が皆おちたり、裏の何間もあるトタン塀が倒れたり散々の由。板塀も竹垣も一間十円ばかり(五倍以上)。トタン板を門の屋根にふくのにも許可が入用。荒れ後の始末も一通りのことにはゆきません。この間うちの狭い風呂場の、三尺に四尺ほどのスノコを新しくしたら金四円也。流しのトタンのこわれを張りかえたら二円也。
――○――
さて、九月一日づけのお手紙をありがとう。この間、お目にかかったとき改まった心持で特にお礼を云ったように、この八月一ヵ月は、実に一重二重のねうちをもって、私のためには有益でした。段々の話のうちに、貴方が去年の正月ごろのことを細かにお訊きになった意味もわかり、周囲の生活的雰囲気と自分との関係の客観的なありようというものもわかり、貴方がそのことを、私に注目させようとしていらっしゃること、そのほかそれぞれにフムフムとわかっていたのだが、この間の土曜日の経験へ私の首ねっこをつらまえて面を向けさせて下すったことは、実に実に感謝に堪えません。
あの二時間ほどの時間は、云いつくせない内容で私の皮をひんむいた。