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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
05 一九三八年(昭和十三年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 229,387 字 · 453 页
九月二十九日
二十三日の最高六・四、二十四日六・六、二十五日六・五です。こまかにはこの次に。
どうか風邪をお大切に。この夏ぶりかえさずにお過しになれたのを、本当によろこばしく思っているのですから。さあ、あしたは早く行こう。ではこれでおやめ、ね
九月二十九日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕
九月二十七日 第五十七信。
五時頃、昨日開成山からかえって来た林町一族がやって来るというところ。只今茶の間に火を入れてテーブルの前に坐ってふと思い立ってかきはじめます。
林町では食堂のテーブルでよくかいた。こちらでは茶の間では小包をたくさんこしらえたが、めったに手紙はかかず。
考えて見たらこの茶の間のたたずまいは詳しく御存じないわけね。南にぬれ縁のついた長い六畳でね、私はつき当りの襖を背(戸棚)にしていつもテーブルをひかえて坐っている。入る方の(私に向って)左手に、例の私たちの箪笥があり、それと並んで例の茶ダンスがあり、茶ダンスのわきの柱に父が一九三五年の二月十三日の上落合の家で私の誕生日のためにプレゼントとして呉れた精工舎の質素な柱時計がかかっている。その柱から一間が襖で、襖のあっちに北に肱かけ窓のある三畳。