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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

05 一九三八年(昭和十三年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 229,387 字 · 453 页

青空文庫

いつ引いたのでしょう。可笑しいこと。〔中略〕

きのうは、何と云ったらよい日だったでしょう。とにかく外出からかえって来て、実にひとりなのが苦痛でした。外で心にうけて来た衝撃が深く強く、こういうときあなたに話し、相談にのって貰え判断を助けて貰ったら、と呻くように感じました。私のことでも、私たちのことでもないのです。全然家族的なことではない範囲での感情の問題なのですが。

親友として如何に処すべきか。人間及び大所高所からの判断は一つしかないのだが、最も愛する友達が、妻母として大なる傷をうけ、流す血をなかなか正視しがたい心持です。きょうは絶えず考えている。一番しっかりとした愛情で行動したい。そう思って考えている。劬ることで侮蔑にならず、虚偽を虚偽として現実を示すことで、単なる正義感の満足とならぬように。

人間は一度ならず間違います。しかし間違いの種類と程度と間違いかたというものがあります。苦しいことだ。良人としての真実、仕事と生活との統一を求める真実、友人の信頼に対する真実、それらの真実とは何でありましょう。どう行動するのが、真実であるかは判っている筈です。