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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
05 一九三八年(昭和十三年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 229,387 字 · 453 页
ともかくお医者に診て貰ったら、切らないでいいという程軽くない、由。それでも熱は七度五分位で、熱にかかわりなく又痛みの自覚にもかかわりない由。
三時半ごろ雨の中入院して手術にかかったのは五時すぎ。一時間余で、正味は三十何分。創は6センチ。盲腸は一部ユ着していて、腰髄麻酔で手術したが、ユ着をはがすとき胆汁を吐きました。すこし化膿しかかっていてやはり放っておくと腹膜をおこすところであったそうで、西野博士も手術前見たとき今度はありますねと云ってらしった通りです。血液検査をして白血球をしらべたら普通四千から六千なのが二万以上であった由。一万を越せばもう全身症状で有無は云わず切るとのこと。よかったと思います。経過もよくて、傷の痛みで誰でも夜眠らずさわぐそうですが私は何だかポーとなって、口が乾いてちょいちょいおきたがその間は眠りました。食事はスープおもゆ五十グラムずつ位のところ。きょうは第三日目で玉子のキミ一つに果汁アイスクリームをたべてよい由。
それでも、私にとって生涯の難物だったつきものがこうやってとることが出来て、手術で心臓が妙にもならず本当によかったと思います。