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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
05 一九三八年(昭和十三年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 229,387 字 · 453 页
風が出て、曇天。鶏のコーココと云っている声や雀の囀りが聞えるのに交って、竹の葉がカサカサと乾いた音を立てている。何だか暮のようです。この竹の葉は達治さんのためにあちこちからおくられた旗の竹の葉の触れ合う音です。きのうまでは二十何本か旗がズラリと立って、むかいの河村さんの家のとなりの小さい空地に大きい国旗が立ち、小旗がはりわたされ、こんな工合で賑やかでした。
ポールに日の丸の絵。てっぺんから斜めに1本のロープが下がり、小旗が沢山つけられているの図
お母さんは又いつ私に来て貰わなくてはならないか知れないから、今度は来ないでもよいと折かえして電報をおよこしになったけれども、やっぱり顔を見れば来て貰ってよかったと大層およろこびで何よりでした。私は六日のふじ(午後三時)で立って、七日の朝八時すぎつきました。非常にこんでいて、寝台もとれなかったので、くたびれて、広島からのりかえてすいた車にのったら眠くて眠くて柳井線は眠って通り、フト 田 という字が見えるので、岩田へ来たかと、逆によみ直したら島田なのでびっくりして、ふくらがしたままの空気枕をつかんでトランクを車の外へすてるように出して降りました。