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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
05 一九三八年(昭和十三年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 229,387 字 · 453 页
御注文の本のリストの整理は、忘れずにやって置きます。
松山の方のことは島田からの手紙でもお判になったことと思って居ります。そう云えば島田の家の井戸が改良されたことお話ししませんでしたね。風呂へ水汲みが厄介なのでコンクリートのタンクをポンプの上にこしらえて、こっちで水を入れておけばあっちは栓をあければよいようになって大した進歩です。
いずれ本人から手紙を上げるでしょうが雅子さんが近々結婚しそうです。対手のひとはまだ私の面識のない人です。細かい家庭のことも知りません。しかしそれで落付ければよいし当人はうれしそうにして自然な軟らかさを体に現しているからいいのでしょう。戸台さんも或は結婚するかもしれない。今年は結婚年のように皆が結婚するので、私はお祝いに忙しい次第です。
生活のやりかたについて私の分ったことをこのお手紙の中でも悦んでいて下すって大変うれしゅうございます。私は本来決して便宜的な人間ではない。又、食うため云々を、素朴に買いかぶるほど稚くもありません。土台、食うためになった作家なのじゃないのだから。世態と日常とは益※(二の字点、1-2-22)各面から煩瑣になります。