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ひきょうのにちりんき

秘境の日輪旗

蘭 郁二郎

「秘境の日輪旗」少年文庫、新正堂、1942(昭和17)年9月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,829 字 · 169 页

青空文庫

「何か見えて?」

「何も見えない……」

ぐるぐるとハンドルをまわした。すると、

「あっ、見える見える、大型のYボートが一隻二キロほど先に浮んでいるぞ、おや、その先にも一隻いる」

やはり、電動装置に故障をおこしたらしく、おなじところにじっとしていた。

祥子が代ってのぞいた。とたんに、ぱっと白い煙が船腹にあらわれ、だーん、と、鋭いこもった音が海面にこだました。

「あっ! 撃って来たわ」

それと同時に、十メートルほど先きに白い水柱がさっと立上った。つづいて二弾がその近くに水煙をあげ、三弾、四弾が落ちて来た。そのたびに二人は手に汗を握ったが、武装をしていないこっちからは応戦することも出来なかった。

故障をおこした発電装置を修繕して逃げのびる工夫をするよりほかに方法はなかった。英夫は懸命に故障を調べた。

「おや、軍艦が来たわ、ボートが軍艦を攻撃しだした!」

英夫がのぞいて見た。水平線から忽然と姿をあらわした一隻の軍艦が、Yボートに接近している。

やがて一発、つづいて二発、Yボートとはちがった砲声が轟いたかと思うと、二隻のボートは二つの黒煙を海面に残して掻き消したように姿を消してしまった。