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ひきょうのにちりんき

秘境の日輪旗

蘭 郁二郎

「秘境の日輪旗」少年文庫、新正堂、1942(昭和17)年9月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,829 字 · 169 页

青空文庫

親切な酋長がえらんでくれたダイヤ族の若者は、巧みに危険を避けて、丸木舟をあやつった。――クラパという名の若者だった。

「クラパは鰐がおそろしくないの?」

いくらかマレー語が話せるようになった、祥子がきくと、

「おそろしくないこともありませんが、私たちは子供の時からなれているんですよ、私たちはあいつを羊の肉で釣るんです、面白いですよ」

「でも、マンデー(水浴)の時、鰐に食われる者もずいぶんあるんじゃない?」

こんどは、英夫がきいた。

「そうです、ですから、子供のうちはおふくろが、おまじないをして護ってくれます」

「どんなおまじないをするの?」

「薬草をたばねて、それで洗ってくれます」

「ダイヤ族のお母さんは、ずいぶんやさしい、いいお母さんね」

すると、クラパは自分がほめられたように嬉しそうな顔をして、

「おふくろが、私たちを一ばん大事にしてくれます。赤ん坊の時から、私たちのお守りを放したことがありません」

「お守りって?」

「かたつむりと、貝の殻と、ロッカイの皮と、チッコルの根です、それに、ウンポオポオズも放したことがありません」

「ウンポオポオズって、どんなもの?」