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ひきょうのにちりんき
秘境の日輪旗
蘭 郁二郎
「秘境の日輪旗」少年文庫、新正堂、1942(昭和17)年9月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,829 字 · 169 页
ただ斑に色のついた、かたまりのようなものだった。
非常にすばしっこい、獣か、人間のような気がした。
箱の間に逃げこんだとすれば、獣にしても、人間にしても、そこから出られないはずだった。英夫はかまわず、その前に突進して行った。
二メートルほどもある、真四角な箱と箱の間に、ほんの僅かな隙間があって、何かがその隅っこに、じっとうずくまっているらしかった。
「おい……こっちへ出ろ」
どなったが、こたえはなかった。ふと、さっき、宮崎運転士から懐中電灯を渡されたことを思い出し、すばやくポケットから取り出すと、さっと、その方にさし向けた。
オレンジ色に縁どった空色の上着、青い格子縞の入った臙脂のスカート、素足に靴をはいた少女が、恐怖に青ざめた顔で、眼を大きく見ひらき、ふるえながら息を殺しているのだった。
「あっ! 祥ちゃん――」
英夫は思わず声を出して叫んだ。
少女の顔は、英夫の家の近所に住んでいた園部祥子とそっくりだった。
だが、祥子がこんなところにいるはずはなかった。いつか村山曹長が、祥子の行方がわからないので、探しているとはいっていたが、こんな遠くのしかも貨物船の船艙の中にいようなどとは考えられなかった。