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ひきょうのにちりんき

秘境の日輪旗

蘭 郁二郎

「秘境の日輪旗」少年文庫、新正堂、1942(昭和17)年9月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,829 字 · 169 页

青空文庫

扉は鍵を閉めずに出たらしく、把手をまわすとじきに開いた。

やはり中には人の気配がなく、何の物音もしなかった。細長い四、五段の真鍮の梯子から入るようになっていて、片側だけの坐席と、テーブルがおかれてあり、その上の食べ残したサンドウィッチや、果物、酒壜、ガラスのコップ、灰皿などが、オレンジ色の間接照明にほの明るく照らし出されていた。

英夫はそれだけ見とどけると、中に人がいた場合の用心に、待たしておいた祥子を呼びに行った。

「モーターボートなら僕も動かせるんだけど、この船の機関部はどこにあるんだろう」

上陸した四人が気付かない前に、船を出さなければならない。――二人は懸命に船を動かす機関部を探したが、それらしい場所はどこにもついていなかった。

そのうちに、あの連中が島に人のいることに気付いて追いかけて来たら、おしまいである。すくなくとも島を探す前に誰かがきっと、引っ返して来るに違いないのだ!

ボートの内も外も、すっかり探したが、不思議なことに出入口は一つしかないらしく、しかも、機関室がついているとすれば、この部屋から出入りする以外には考えられないのに、テーブルのある部屋のあたりの壁は、ちょうど船の内部を円くくり抜いたようにまっ白に塗られた鉄板で出来ていて、どこも厳重に鋲でとめられていた。