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ひきょうのにちりんき

秘境の日輪旗

蘭 郁二郎

「秘境の日輪旗」少年文庫、新正堂、1942(昭和17)年9月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,829 字 · 169 页

青空文庫

機関部らしいところはどこにもついていないのである。

二人は絶望のどん底に落されたように、しばらく坐席に腰かけて、ぼんやり贅沢な御馳走を見つめていた。

「美味しそうね、そのサンドウィッチ食べてもいいか知ら」

祥子がいった。

「御馳走になったってかまわないけど、島のどこかに隠れていた方が、この船にぐずぐずしてるよりましらしいね、サンドウィッチと果物だけそっくり頂戴して行こう、あのビスケットだってどうなってるかわからないからね」

「賛成だわ、こんな立派な船を見すてるのはおしいけど、これ頂いて行きましょう」

英夫は、ガラスのコップを取りのけようとして、ふと、マホガニーの机の上に、白い小さな象牙の三つのボタンのあることに気づいた。

ボタンの上には、三つとも方向の違った金色の矢印がついていた。

「何でしょう、そのボタン?」

祥子も気づいたらしかった。

気をつけて見ると、二つのボタンの矢印は反対の方向についていて、もう一つのは横に向ってついているのだった

ためしに、反対の方向に矢印のついている二つのボタンのうちの、一つを指で押して見た。

すると、次の瞬間、二人には全く思いがけない、おどろくべき出来ごとがおこった――。