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くいどうらく
食道楽
村井 弦斎
秋の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 167,435 字 · 329 页
面白うございましてしょう。それから先刻大原さんが此方へいらっしゃって吃逆のお薬をお持ちなすった後また覗きに参りましたら、あのお薬で吃逆は直ぐ癒ったとみえてお代さんはケロリとした顔して大原さんの側に座っているのです。大原さんの前に叔父さんだの叔母さんだの御両親だのがズラリと並んで大原さんに何か言っていると、大原さんはただモー閉口した御様子で下ばかり向いてお在でした。その内に大原さんの阿父さんという人が何か言出すとお代さんが大声揚げてワーッと泣き出すやら、阿母さんが急にお代さんを宥めるやらそれはそれはおかしいようでございますよ。今もちょいと見て参りましたがまだ何だかゴタゴタして急には治まりそうもありません」と下女の物語にて大原の困難は察するに余りあり。お登和嬢いよいよ気にかかり「竹や、和女は草臥れたろうから私に構わず寝ておくれ。戸締りは私がするから」と下女をして寝に就かしめその身は徐かに玄関へ出て門口に立ちて窃に大原家の様子を窺う。夜更けて四辺静なれば大原家にて人のゴタゴタ語り合う声幽に聞ゆ。お登和嬢その声に引かされて思わず門の外へ出でたり。程なく大原家の話し声罷みて二、三の人のドヤドヤと表へ出でたる様子、月の光りに透し見れば大原が叔父と叔母とを送りて以前の旅宿へ行くらしし。