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くいどうらく
食道楽
村井 弦斎
秋の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 167,435 字 · 329 页
第二百六十 食道楽会
第二百六十 食道楽会
小山の一諾に中川も漸く心を安めたり。中川よりもお登和嬢が如何ばかり嬉しく感じけんニッコと笑いて徐に坐を立ち「兄さん、何か拵えて晩の御飯を小山さんに差上げましょうか」と、感謝の意は御馳走に現れんとす。中川もそれがためとてなけれども緩々親友と閑談したく「ウム、何ぞ拵えておくれ。いつでも西洋料理だから今日は一つ日本料理を差上げたらよかろう」お登和嬢「ハイ」と返事も軽く出で欣々として台所へ立って行く。小山が少しく遠慮して「イヤモーお構い下さるな、僕は今お登和さんに珈琲ケーキやバターケーキを御馳走になった処だ。中川君、広海子爵は近日何か食物研究会のようなものを開かれるとお登和さんに伺ったが今日はその御相談もあったかね」中川「大ありさ。その相談が長くなってこんなに手間取れた。近い内に日を卜して食道楽会というものを開かれる。即ち子爵家の邸内を会場として三十人を限り食道楽者流が極上品な食物会を開くという仕組だ。もっともその奥には玉江嬢のために婿君の候補者を捜し出そうという特別の意味もあるが先大主意は食物研究のため家族的の交際会を開くのだ。会費は一人前二円としてその二円を悉く御馳走の原料と炭代に仕向ける。