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くいどうらく

食道楽

村井 弦斎

秋の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 167,435 字 · 329 页

青空文庫

第二百三十八 茶話会

子爵は貴郎方よりも人事に老功でいらっしゃるからまた好い御分別があるかもしれません。ちょうど玉江さんからも先刻食物研究会の方案を立てて戴きたいというお話しがありますから早速広海さんへいらしってその御相談かたがた大原さんの事をお頼みなすって御覧なさいな。あのお方に何とか御工風があるかもしれません」と熱心のあまりに絞り出したる当座の新案。中川も同意し「なるほどそれもよかろう。では直ぐに広海さんへ往って来よう、そういう事にかけては老功者の意見を聞く方がよい。小山君、暫くここで待っていてくれ給え、僕は一つ広海さんまで往って来るから」と一時も遅疑する事ならねば客を家に残して広海子爵の許へ赴けり。

第二百三十八 茶話会

中川の去りて後小山は独りお登和嬢と対座せしが嬢の様子の引立たぬを見て心の愁を想い遣り「お登和さん、さぞ御心配でしょう。折角あれまでに事が運んで今頃はモー大原さんと楽しい家庭をお造りなさる事が出来た時分ですのに意外な事が出て来るものです。しかしお登和さん、大原君の心は僕がよく知っています。大原君はたといお代さんと婚礼するにしても形だけの婚礼で心は独身を守もるつもりだといっています。