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くいどうらく
食道楽
村井 弦斎
秋の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 167,435 字 · 329 页
第百九十二 昆布スープ
第百九十二 昆布スープ
とかくの中に晩餐の時刻となりて中川家独得の長食卓は客の前に持出されぬ。ナイフもフークもスプーンも例の杉箸も法の如く並べられたり。お登和嬢は今日の御馳走を大原に賞翫されざるが何よりの心残り「ねー兄さん、小山さん御夫婦も大原さんも今日はどうしていらっしゃらないでしょう。小山さんの方は先日からお差支があるといってお断りでしたけれども大原さんは今朝までいらっしゃるおつもりでしたからお料理の用意もしてあるのに、御両親が御帰京とはちょうど生憎な事ですねー」と心には片時も大原を忘れず。中川も大原の来らざるを残念に思いしが忽ち表より入り来る大原の声「中川君、今日は大きに失敬した。広海さんもおいでだろうね。僕はこれから新橋の停車場へ出迎いに行かねばならん。広海さんによろしくそういってくれ給え」と格子戸の外より立話し。中川は玄関へ立出で「マアちょいと上り給え、汽車は何時だ。七時四十分だと、まだ時間は沢山あるでないか」大原「ウム、時間はあるけれどもお代さんが無闇と急き立てるから家を出て来た」中川「ではマア上り給え、今ちょうど御馳走が出る処だ。食べて行っても間に合うだろう、時間が来たら途中で立っても構わん。