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くいどうらく
食道楽
村井 弦斎
秋の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 167,435 字 · 329 页
第二百三十六 女の心得
大原も今まで耐えし悲みを包み切れず、涙ぐんで「ハイ」と幽に答えしが忽ち思い直して顔を揚げ「アハハ、牛は牛連れと言ってちょうど好く似合いましょう」と無理に笑いて悵然と溜息を吐く。お登和嬢何事も得言わでただサメザメと泣いている。忽ち大原家より駆け出したるお代嬢、四辺を見廻して大原の姿を見付け「満さーん、其処であにしているだ」
第二百三十六 女の心得
この翌日お登和嬢は口にこそ悲みの声を漏らさねども朝より心地悪ししとて食事もなさず。玉江嬢が稽古に来りし時も料理の教授に実が入らで平生よりも早く切上げ、暇さえあれば人なき処にて深き思案に沈みいたり。兄の中川その様子を怪み「お登和や、和女は今日大層顔の色が悪いがどうかしたかえ」と妹を案じる兄の真情、お登和嬢は明白にそれとも言い兼ね「イイエ、別にどうも致しませんが何だか気分が悪くって」中川「何で気分が悪い」お登和嬢「イエモー大概癒りました」と強いて元気を装いて兄の懸念を消さしめんとす。兄はなかなか黙って聞かず「お登和や、和女によく言っておく事がある。人の家庭では外の人に疑問を起さしめてその疑問の解釈を与えないほど家庭の和気を破る事はない。