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くいどうらく
食道楽
村井 弦斎
秋の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 167,435 字 · 329 页
第二百七十二 善後策
日本料理や惣菜料理を拵えるにも先ずその食物の性質を調べてから取合せをしなければならん。近頃はよく日本料理と西洋料理とを無闇矢鱈に取交ぜて合の子の折衷料理が出来る。それは先ず一段の進歩といってもいいが最も笑うべき事はそれに衛生料理と名を付ける事だ。何が衛生だか訳が分らん。かえって非常な不衛生な料理の出て来る事もある。衛生の事を知らずして妄に衛生の名を冠せる如きは最も生意気といわざるを得ない。これからは世人も衛生料理というものに出逢ったらどの点が衛生に適っているかその説明を聞て口に入れるがいい」と随分無理な御注文。客の小山も主人の長談義を聞き飽きたりと見え食事の済むが否や急に暇を告げて帰り去りぬ。
第二百七十二 善後策
この夜お登和嬢は一縷の望を抱いて寝ねぬ。小山ぬしの尽力その甲斐あらば大原ぬしは押付婚礼を免れて忽ち海外へ赴き給わん。大原ぬしがあの誠実と熱心とを以て西洋の家庭教育を調べ給わば帰来我邦を益する事幾干ぞ。学校教育には学士や博士の多きこと山の如くなれどもいまだ著しき教育の効果を見ず。大原ぬしがあの誠実なる心を以て我邦の家庭教育を改良し給わば世人は将に神とも仏ともしてその徳を感謝せん。