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くいどうらく

食道楽

村井 弦斎

秋の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 167,435 字 · 329 页

青空文庫

第二百四十五 上等の品物

ドロドロになったら火から卸してレモン油を小匙に軽く一杯加えて器械へかけます。しかしこれでもまだアイスクリームとは申されません」小山「オヤオヤ」

第二百四十四 アイスクリームの挿画

第二百四十五 上等の品物

お登和嬢「アイスクリームと申すからには新鮮なクリームが入らなければならんのです。先ず普通の処では玉子の黄身二つと砂糖二杯と一合の牛乳とを混ぜて湯煎にして火から卸した時一合のクリームとレモン油か何か外の香料を加えて固めます。それを上等にしますと二合のクリームばかりへ粉砂糖大匙三杯混ぜて別段湯煎にしないでもザット沸立たせて香料を加えて固めます。これには玉子も牛乳も入れません」小山「なるほど、それが則ちアイスクリームと称する所以ですね。世間にあるのはアイスクリームでなくってアイスミルクですな、アハハ。時にお登和さん、私はこういう話を聞ました。東京のある氷店の主人が大層アイスクリームを上手に拵て平生客に自慢するそうです。その家へ洋行帰りの紳士が来て和郎の家のアイスクリームは大層上等だそうだが土産にするから五人前ほど紙へ包でくれとこういったのです。主人は妙な顔をして、エ、何へ包みます、紙へ包めとおっしゃるのですか、串談言ってはいけません、紙へ包めばアイスクリームが融けてしまいますと笑っている。