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くいどうらく
食道楽
村井 弦斎
秋の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 167,435 字 · 329 页
第二百六十一 料理の粋
小山「それは僕も大賛成だ。今君のお不在中に僕はお登和さんから二十銭弁当やら二、三十銭の西洋料理やら色々有益な事を伺って追々実行せんとする所だ。僕らの身分では年に二度位二円組の方へ出席して毎月の分は三十銭組位な食道楽会を開きたいね。しかし中川君、食道楽会は西洋料理に限るかね。折々は日本料理の食道楽会も開いたらよかろう。君の料理法はあんまり西洋風に傾き過ぎているという評もあるぜ。その事について何か君の説があるかね」とかかる評言を下すは独り小山のみにあらじ。
第二百六十一 料理の粋
中川は大に説あり「小山君、その事については第一番に人の心から負惜しみという劣情を引去らなければならん。負惜みの情は誰の心にも多少あるものだがいわゆる動物性の劣情でそれがために何事に向っても公平な観察を下す事が出来ん。日本料理だって古来幾多の経験を累ねてその料理法には自然と衛生上の主意に暗合している事も多いけれども皆な悉く衛生上から割出して配合や調理法を極めてあるかというに決してそうは行かん。それを日本料理にも国粋がある、何ぞ西洋料理を学ばんやと言ったら負惜みに違いあるまい。といって何でも西洋風に限ると西洋風にばかり心酔して日本風の長処までを捨てるのも軽卒に過ぐるけれども事物を公平に観察してその長短善悪を判別するのが我々文学者の責任で