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くいどうらく
食道楽
村井 弦斎
秋の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 167,435 字 · 329 页
第二百二 食物研究会
と力に任せて我家の方へ引戻す。下女も側にウロウロして敢て争いを止めんともせず。この時忽ち大原家の裏口より大きな風呂敷包みを背に負いて一散に駆け出す怪しき曲者、下女は田舎者とて不審顔に「あれはあんだんべい」大原それを見て「泥棒だ、和女たちが家を空虚にして出たから明巣覘いが入ったのだ。泥棒泥棒」と二足三足追い駆けたれど重き身体の走る事もならぬに曲者の姿は何処へか消え失せたり。呆気に取られたるお代嬢「嘘だんべい、何ぼ東京だって今の間にあんな物を盗んで行く訳がねい」下女「だっても油断はなんねいから早く往って家の中を見さっせい」とお代を促して家に入る。忽ち叫ぶお代の声「ヤア大変だ、満さん来てくっせいよ。わしの箪笥の抽斗が明いて中の衣服が皆んな失くなったよ」と俄かに騒いで「ぬすっとうめ」と表へ駆け出す。大原外より制し「モー騒いでも仕方がない」とお代嬢を宥めて内へ入る時、門前へ車の音ガラガラと聞えて双方の両親大阪より戻り来りぬ。お代嬢が泣くやら騒ぐやら、家の内は俄に大混雑。
第二百一 大混雑の挿画
第二百二 食物研究会
大原家の混雑は知るに由なし、中川家にては大原の去りたる後広海子爵が他人のおらぬを好機として主人を対手に結婚問題の研究を始めたり。