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くいどうらく

食道楽

村井 弦斎

秋の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 167,435 字 · 329 页

青空文庫

第二百五十三 玉子廻し

発達を過ぎた大人と発達盛りの小児とはよほど食物の配合を変えなければなりません。大人になっても毎日食物の影響を受けています。脳髄が発育して上等の人種になるほど食物の影響を鋭敏に受けます。ちょうど犬は腐った肉を食べても平気ですが人はそれを食べると胃腸を害するようなもので、高等の動物になるほど食物の影響に感じやすいのです。同じ人でも白痴と狂人は何を食べても滅多に中りません。それは神経を使わないから胃腸が無神経同様になって下等動物に近いのです。そう思うと何を食べても決して中らぬなんぞと自慢するのはあんまり自慢にもなりませんね」と今の世にはいまだかかる自慢もありと見ゆ。

第二百五十三 玉子廻し

長き談話に時間は多く過ぎけれども中川はいまだ広海家より帰り来らず。客の小山も退屈しけん「お登和さん、中川君は大層お手間が取れますね。子爵がお不在でしょうか」お登和嬢「さようですね、モー帰りそうなものですが近日広海さんのお家で食物研究会をお開きになるはずですからその御相談が始まったかもしれません。貴客こそ御退屈でしょう。失礼ですけども私が只今珈琲を煎じて別に珈琲ケーキを拵えますから少々お待ち下さいまし」