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くいどうらく

食道楽

村井 弦斎

秋の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 167,435 字 · 329 页

青空文庫

第二百六十九 鳥の汁

なからしむ。

一万八千頭の乳牛を飼養する牧場にはまた副産物として二千匹の鶏を飼養し、その鶏卵を販ぎ、馬二百七十頭を飼養する副産物としてはその馬糞を利用して菓物園を開き、林檎、桜実、梨子、桃、苺等を培養し、その葡萄の種類のみにても三百種の多きに上り、その菓物はそのまま市中に販がるるもの、あるいはその液汁を搾りて酒と為し、あるいは煮てジャムとなし、あるいは干して乾かし以て市民に販ぐ。その得る所もまた決して少からずという。我邦にても早くかくの如き牛乳を得たきものなり。

第二百六十九 鳥の汁

客も主人もともに膳へ向いぬ。主人の中川先ず椀を執りて我が説の材料となし「小山君、日本風の食事は吸物を椀へ盛ってから暫くゴタゴタして客の前へ持出して客も盃を二、三杯累ねるまで容易に蓋を取らないからいいけれども西洋風に客の待っている処へ直ぐ持って来て客が劇てて口へ入れると忽ち舌を焼くね。しかしこれはお登和が気を利かせてちょうど飲み頃にして来たから直ぐに試み給え。一種風変りな味だろう」と相も変らず自慢するに小山は二口三口歃りつつ「なるほど美味しい味だ。実なしのドロドロ汁、何とも言われん風味がある。