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さぶ
さぶ
山本 周五郎
「週刊朝日」 1963(昭和38)年1月4日号~7月5日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 210,521 字 · 415 页
心学教師などというから、痩せて枯淡な風貌の人かと想像していた栄二は、すっかり予想が外れたので可笑しくなり、こいつはたいしたずくにゅうだと思った。――広間の一隅には人見張役の小島良二郎と、役所詰の同心が二人、そのあいだに岡安喜兵衛の顔も見えた。
立松教師の話は退屈なものであった。当人だけが昂奮して、自分の話すことに自分で感動し、うん、これだ、これが人間の人間たるみちだ、うん、などとりきんで頷いたり、扇子で自分の膝を力まかせに打ったりした。孝経にはどうあるとか、心学ではこううたっているとか、唐のたれそれはどうしたとか、読んだとも聞き覚えたともわからない話や、妙な歌などをむやみに並べたて、これらがまことに人の生きるみちである、という文句を繰返すのであった。栄二は欠伸をがまんするのに困っていたが、そのうちに伯翁がとつぜん声を高めて、豊臣家の木村なにがしという武将が、茶坊主に頭を叩かれても忍耐したのだぞ、とどなりだしたのでびっくりした。
「ひとかどの武将たる者が、茶坊主に頭を叩かれたのだ」と伯翁は威嚇するように、眼を剥いて座の左右を睨みまわした、「――けれども木村重成は黙っていた、なんにもしなかった、痛いという顔さえもしなかった、これが人間の違いだ、茶坊主は茶坊主で終ったかどうかはここでは問題外として、重成は侍大将