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さぶ
さぶ
山本 周五郎
「週刊朝日」 1963(昭和38)年1月4日号~7月5日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 210,521 字 · 415 页
小頭でいちばん年長の伝七が世話役となり、外使いの者が鳥や魚を買って来た。それに寄場の勝手からねだった野菜と米とで、手早く二十五人分の膳を作った。一つはこぶの清七のもので、彼は膳が揃ったところで呼ばれた。――ひと皿に盛りつけられた鳥と野菜の甘煮、焼魚と浸し物、味噌汁に白いめしというのを見て、みんなのあいだにどよめきが起こった。寄場の食事は量こそ多いが麦めしで、正月の三日間は雑煮と塩鮭、五節句や鎮守稲荷の祭には赤飯、土用中にはどじょう汁、七夕にはそうめんなどという特例があるほか、ふだんがごく粗末なものなので、どんな僅かな馳走にも歓声をあげたくなるのだろう。――みんなが坐ったところで、世話役の伝七が念を入れて注意したのち、酒が出され、まず栄二と清七が盃を持った。
「ありがとうよ」清七はそっと栄二にそう云った、「みんなおめえのおかげだ、おまけに三十日も迷惑をかけて申し訳がねえ、堪忍してくんなよ」
「おたげえさまだ」と栄二が答えた、「これからも仲よくやろうぜ」
盃というのは二つだけ、あとの者は湯呑で、飲めない与平と他の二人が、量の按配をしながら酌をしてまわった。