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さぶ
さぶ
山本 周五郎
「週刊朝日」 1963(昭和38)年1月4日号~7月5日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 210,521 字 · 415 页
ます」
「強情なことを云う」奉行は辛抱づよく、また穏やかに微笑した、「だが奉行としても、いったん出したものを引込めるわけにはいかぬが、どうしたらいいか」
栄二は答えなかった。
「褒美のことは町奉行の許しが出ている」と成島は云った、「いまになって取消すわけにはまいらない、そのほうになにかいい思案でもあるか」
栄二はちょっとまをおいて、御褒美なら島に残ってはたらいた七十余人ぜんぶに与えていただきたい、と答えた。
「そうか」奉行は暫くして頷いた、「よし、差支えはないだろう、では一貫文は清七、あとの一貫文は七十余人に与えるとしよう」
そして奉行は立って奥へ去った。列席した同心たちと共に、栄二と清七も立ちあがったが、岡安喜兵衛が栄二を呼びとめた。
「おまえには話すことがある」と岡安は云った、「こっちへ来てくれ」
清七は縁側へ出てゆき、他の同心たちは役所のほうへ去った。岡安は廊下を曲って、いつもの、あの小座敷へはいり、栄二と向き合って坐った。――岡安喜兵衛はなにかを思い出したように、いちど坐ったのを立ちあがって、北側の窓をあけ、元のところへ戻って坐り、そのまま暫く黙っていた。