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さぶ
さぶ
山本 周五郎
「週刊朝日」 1963(昭和38)年1月4日号~7月5日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 210,521 字 · 415 页
眼つきや口許には、健康な若さがよみがえってきていた。
「肝心なことを忘れちゃいけないね」と与平が云った、「病気じゃなくって足の骨が折れたんだよ、医者の手ははなれたけれども、本当はこれからが大事なんだから、ちっとずつ辛抱して慣れていって、それからあるく稽古にかかるんだからね」
「それじゃあちっとばかり早かったかな」
「なにがだね」
「おらが田舎にいたじぶん、ちん――」と云いかけて清七は慌てて云い直した、「作左っていう片足の不自由な人がいたっけ、馬に蹴られたかどうかして、やっぱり片足が、――不自由になっちまってさ、その人は杖を突いてあるいてたんだが、それを思いだしたもんだから、こんなふうにまねて作ってみたんだ」
清七はそれを持ちあげて見せた。丁の字形に、頭に横木のある撞木杖で、きれいに磨きがかけてあった。だめだめ、そんな物を見せてくれちゃあ困るよ、と与平が手を振り、栄二は茶碗と箸を置いた。
「済まないな清さん」と栄二は向き直って云った、「ありがとうよ、見せてもらおうか」
清七は与平の顔色をうかがい、栄二はいざりながら上り端のほうへ進み出た。
「少し長いかもしれねえ」