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さぶ

さぶ

山本 周五郎

「週刊朝日」 1963(昭和38)年1月4日号~7月5日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 210,521 字 · 415 页

青空文庫

暮の迫った二十六日の日は朝から雪になったが、その雪の中をおのぶがたずねて来た。仕事は雪で休みだから、もっこ部屋には全部の人間がいた。いつもなら役所の小座敷で会うのだが、栄二の足はまだそこまであるく力はない。そこで与平がみんなに話し、隅のほうへ寄ってもらったうえ、いつかのように栄二のまわりを半屏風で囲った。

「あら、元気そうじゃないの」おのぶは戸口で傘の雪をはらいながらそう云った、「みまいに来るのがおくれちゃってごめんなさい、十一月からこっちまるでめちゃくちゃだったのよ」

そして、与平に挨拶をし、持っていた包みをあけて、少ないけれどみなさんでひと口ずつ、と云いながら切餅の包みを取って渡し、あとの包みを持って栄二のほうへ来た。

「すっかり元気そうじゃないの」

「同じことばかり云うな、おちつけよ」

「太ったようね」

「足の話はごめんだぜ」

「たしかに少し太ったわ」おのぶは眼を細めて栄二の顔から躯を眺めまわした、「頬のとこなんか見違えるようだわ、いやだ、そのへんで止めないとせっかくの男ぶりがさがっちまうわ」

「ただ饒舌りに来たのか、それともなにか用でもあるのか」

与平が茶を持って来ると、おのぶは栄二の問いをはぐらかすように、与平におあいそを云い、茶を啜った。