轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
さぶ
さぶ
山本 周五郎
「週刊朝日」 1963(昭和38)年1月4日号~7月5日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 210,521 字 · 415 页
おのぶは栄二に酌をし、さぶに酌をした、「うちの話もさせないでね、人には聞かせられないような、それこそみじめなくらしなんだもの、いっそのことうちをとびだして、乞食にでもなっちまおうかって、そう思わない日はないくらいよ」
「よせよそんな話」と栄二が云った、「自分からきかないでくれって云ったんだろう」
「ほんとだ」おのぶは小さな肩をすくめた、「ごめんなさい、はいお酌」
「その八重歯、可愛いよ」さぶが酒を啜ってから、眩しそうな眼つきでおのぶの口許をみつめた、「その八重歯は抜かずにおくほうがいいと思うがな」
「抜くんじゃないの、自然と抜けるのよ」
「どうしてさ」
「あら知らないの」おのぶは眼をみはった、「八重歯っていうのはね、順番外れに生えたよけいな歯なんですって、だから自然と押しのけられて、いつか抜けてしまうんですってよ」
栄二が慌てて云った、「抜けなければ唇に穴があいちまうんだ、飲めよさぶ」
「あたしなにか悪いこと云ったかしら」とおのぶは栄二の顔を見た。
「いいんだ、そんなことありゃしないよ」とさぶは人の好い笑顔で云った、「栄ちゃんはおれが気にしやあしないかと思って心配しただけさ、おらあ慣れてるから、どんなこと云われたって気になんかしやしない、――もしも唇に穴があくんなら、八重歯は抜けるほうがいいにきまってるさ」