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さぶ

さぶ

山本 周五郎

「週刊朝日」 1963(昭和38)年1月4日号~7月5日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 210,521 字 · 415 页

青空文庫

「あっしもいっしょですか」

岡安喜兵衛は首を振った、「おまえは北町奉行へ差し戻されて、再吟味ということになった、それ以上のことは私からは云えない」

「わかりました」栄二は頭を低く垂れ、呟くように云った、「――いまになってみると、あの二人にはやりすぎて、悪かったと思います」

「それは違う」岡安は栄二の言葉を強く遮った、「悪かったと思うのはあの男たちではない、もっとほかに人がいる筈だ」

栄二は口をつぐんだ。岡安喜兵衛はそのあとを云わずに、黙って栄二の眼を見まもっていたが、わかるだろう、とでも云いたげに頷いてから、静かに立ちあがった。

「むりなお願いかもしれませんが」と栄二がきいた、「ここから出るまえに、部屋のみんなと会えるでしょうか」

「私の一存でははからえないな」

「ぜひお願いします、みんなには口で云えない恩があるんです、別れにひと言だけ礼を云わせて下さい、お願いします」

このとおりです、と云って栄二はそこへ両手を突き、繰返し頭をさげた。

「奉行に願ってみよう」と岡安は云った、「だが、おそらく許しは出ないだろう、望みはないと思うほうがいい、いまおまえは咎人なのだから」