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さぶ
さぶ
山本 周五郎
「週刊朝日」 1963(昭和38)年1月4日号~7月5日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 210,521 字 · 415 页
奥の六帖には長火鉢、箪笥、茶箪笥、衣桁、鏡架などが並んでい、板の間には仕事道具が揃えてあった。
「これだけを独りでやったのか」
「そうじゃねえ、奥のほうはおすえちゃんと二人で揃えたんだ」
「よくそんな金があったな」
「怒られるかもしれねえが」とさぶがあやまるように云った、「見てもらいてえものがあるんだ」
栄二は火のない長火鉢の脇に坐り、おちつかないようすで、その長火鉢のふちや、猫板などを撫でた。さぶは箪笥の小物入れの抽出から、半紙三枚を折った書付けを取出して来て、栄二の前に坐り、それを手渡した。
「栄ちゃんから預かった金で、これだけの物を揃えた、断わりなしに勝手なまねをして済まなかったが、品物の値段はそれにちゃんとつけておいたよ」とさぶは云った、「――たぶん間違いはねえと思うが、念のために見ておいてくれないか」
栄二は三枚の書付けにざっと眼をとおしたが、もちろん帳尻を見るようなつもりはまったくない、彼はふところから財布を出すと、それを書付けといっしょに、さぶの前へ押しやった。
「おめえになにもかもやってもらって、済まないというのはこっちのことだ、この財布の中には石川島で稼いだものがはいってる。