轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
さぶ
さぶ
山本 周五郎
「週刊朝日」 1963(昭和38)年1月4日号~7月5日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 210,521 字 · 415 页
さぶはめんくらって、とんでもねえ、おせえちゃんはなんでもおおげさだから困る、などと吃りながら云い、自分の声の高いのに気づいて口を手で塞いだ。おとうさんの病気はながいのか、と栄二がきき、娘はせっせと針を進めながら語った。――父親は長沼十樫といい、としは五十七歳になる。祖父の代までは微禄の御家人で、本所のほうの小屋敷に住んでいたらしい。父が家督をし、祖父が亡くなるとまもなく、小普請組のうち十年無役の者が召放しになった。お上の勝手元の都合によるもので、五十両という金を貰い、小屋敷を出なければならなかった。浪人した十樫は料理屋の女中だった女と結婚し、寺子屋のようなことをしてつましくくらしていた。そのあいだ幾たびとなく住居を移し、妻は三人の子を生んだが、上の二人は生れるとまもなく死に、三人めのおせいだけが丈夫に育った。生れたのは深川のどことかで、それから神田の柳原、いちじは日本橋にも住んだことがある。はっきり覚えているのは、下谷の御成道の太助店という長屋にいたときのことで、おせいは五歳だったが、母親は良人と娘を捨てて出奔した。十樫は浪人するときに貰った五十両を、万一の場合に備えて隠しておき、どうしても必要に迫られたときだけ、ちびちびと出して使っていた。