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さぶ

さぶ

山本 周五郎

「週刊朝日」 1963(昭和38)年1月4日号~7月5日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 210,521 字 · 415 页

青空文庫

「あたしはこう思うわ」とおすえは続けた、「金襴の切のまちがいがあったとき、さぶちゃんはあんたといっしょだった、あんたといっしょに仕事をしていて、あの切があんたの道具袋の中へ入れられるのを知らなかった、側についていて、そんな大事なことに気がつかなかった、一生の頼みだと思う人の災難を、側にいながら防ぐことができなかった、――これは自分の罪だ、どんなことをしてもこの罪はつぐなわなければならない、――さぶちゃんならそう思うのがあたりまえでしょ、ほかの人ならともかく、さぶちゃんならきっとそう思う筈だわ」

栄二はじっとおすえの顔を見まもった、「――おめえ、ふるえているな」

「さぶちゃんがあんたのために、人なみ以上のことをしたからって、それであの人を疑うなんてあんたらしくないことだわ」

「そんなら、ここに書いてあるこの、この文句はどうとったらいいんだ」

おすえは硬ばった顔を俯向け、それから「水を飲んできます」と云って立ちあがった。栄二は湯呑に酒を注ぎ、それを口まで持っていったが、眉をしかめて飲むのをやめ、湯呑を持った手を膝の上へおろした。そこへおすえが戻って来て、坐った。