轻松读懂日语经典作品
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さぶ
さぶ
山本 周五郎
「週刊朝日」 1963(昭和38)年1月4日号~7月5日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 210,521 字 · 415 页
「それを忘れたわけじゃあねえが」と栄二は続けていた、「まったく覚えのねえぬれぎぬをきせられて、十年も勤めた店を追い出され、ひと言のいい訳もきいてもらえなかったのでかっとなった、生れて初めて、世間も人も信じられなくなり、どうにでもなれと、すてばちな気持で飲みあるいたうえ、ゆき当りばったりに女と寝てしまった」
どこで幾人の女と寝たかも、寝た相手がどんな顔かたちだったかも記憶がない。少しも覚えていない相手と寝た、ということが、いっそう自分をけがらわしく感じる。この、自分をけがらわしく感じる気持が消えるまでは、おすえには近づきたくないのだ。
「本当に綿文から暇を取ったんなら、金杉にあるといううちへ帰っていてくれ」と栄二はおすえに云った、「これならどうにかやってゆける、という段取りがついたら、おれのほうから改めて話を持っていくよ、尤も、断わっておくが、いつのことになるかわからない、半年でそういう気持になるか二年さきになるか、いまのおれには見当もつかない、だから、ぜひ待っていてくれとは云えないんだよ、おすえちゃん」
おすえは大きくみはった眼で、栄二をじっとみつめながら頷いた。