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さんごくし
三国志
吉川 英治
06 孔明の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 161,356 字 · 323 页
折から、三通の金鼓が、袁紹の陣地からながれた。
見れば、大将軍袁紹が、門旗をひらいて馬をすすめてくる。黄金のに錦袍銀帯を鎧い、春蘭と呼ぶ牝馬の名駿に螺鈿の鞍をおき、さすがに河北第一の名門たる風采堂々たるものを示しながら、
「曹操に一言申さん」と、陣頭に出た。
西軍の鉄壁陣は、許、張遼、徐晃、李典、楽進、于禁などの諸大隊をつらねて、あたかも人馬の長城を形成している。――その真ん中をぱっと割って、
「曹操これにあり、めずらしや河北の袁紹なるか」と、乗りだしてきたもの、いうまでもなく、いま天下の動向この人より起るとみられている曹操である。
曹操はまずいった。
「予、さきに、天子に奏して、汝を冀北大将軍に封じ、よく河北の治安を申しつけあるに、みずから、叛乱の兵をうごかすは、そも、何事か」
彼が敵に与える宣言はいつもこの筆法である。袁紹は当然面を朱に怒った。
「ひかえろ曹操。天子のみことのりを私して、みだりに朝威をかさに振舞うもの、すなわち廟堂の鼠賊、天下のゆるさざる逆臣である。われ、いやしくも、遠祖累代、漢室第一の直臣たり。天に代って、汝がごとき逆賊を討たでやあるべき。