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さんごくし

三国志

吉川 英治

06 孔明の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 161,356 字 · 323 页

青空文庫

曹操の与党、孔秀というものが、部下五百余騎をもって、関門をかためていた。

「ここは三州第一の要害。まず、事なく通りたいものだが」

関羽は、車をとどめて、ただ一騎、先に馳けだして呶鳴った。

「これは河北へ下る旅人でござる。ねがわくは、関門の通過をゆるされい」

すると、孔秀自身、剣を扼して立ちあらわれ、

「将軍は雲長関羽にあらざるか」

「しかり。それがしは、関羽でござる」

「二夫人の車を擁して、いずれへ行かれるか」

「申すまでもなく、河北におわすと聞く故主玄徳のもとへ立ち帰る途中であるが」

「さらば、曹丞相の告文をお持ちか」

「事火急に出で、告文はつい持ち忘れてござるが」

「ただの旅人ならば、関所の割符を要し、公の通行には告文なくば関門を通さぬことぐらいは、将軍もご承知であろう」

「帰る日がくればかならず帰るべしとは、かねて丞相とそれがしとのあいだに交わしてある約束です。なんぞ、掟によろうや」

「いやいや、河北の袁紹は、曹丞相の大敵である。敵地へゆく者を、無断、通すわけにはまいらぬ。……しばらく門外に逗留したまえ。その間に、都へ使いを立て、相府の命を伺ってみるから」

「一日も心のいそぐ旅。