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さんごくし

三国志

吉川 英治

06 孔明の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 161,356 字 · 323 页

青空文庫

「ほ。長老も蒲東のお生れか」

そこへ、ずかずかと、弁喜が佩剣を鳴らして歩いてきた。そして普浄和尚へ、

「まだ堂中へ、お迎えもせぬうちから、何を親しげに話しておるか。賓客にたいして失礼であろう」

と、疑わしげに、眼をひからしながら、関羽を導いて、講堂へ招じた。

その折、長老の普浄が、意味ありげに、関羽へ何か眼をもって告げるらしい容子をしたので、関羽は、さてはと、はやくも胸のうちでうなずいていた。

果たして。

弁喜の巧言は、いかにも関羽の人格に服し、酒宴の燭は歓待をつくしているかのようであったが、廻廊の外や祭壇の陰などには、身に迫る殺気が感じられた。

「ああ。こんな愉快な夜はない。将軍の忠節と風貌をお慕いすることや実に久しいものでしたよ。どうか、お杯をください」

弁喜の眼の底にも、爛々たる兇悪の気がみちている。この佞獣め、と関羽は心中すこしの油断もせずにいたが、

「一杯の酒では飲み足るまい。汝にはこれを与えよう」

と、壁に立てておいた青龍刀をとるよりはやく、どすっと、弁喜を真二つに斬ってしまった。

満座の燭は、血けむりに暗くなった。関羽は、扉を蹴って、廻廊へおどり立ち、