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さんごくし
三国志
吉川 英治
06 孔明の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 161,356 字 · 323 页
「孔明の友人、博陵の崔州平ともうす者です」
「おう、ご友人か」
「将軍のお名まえも、夙に伺っておりますが、かくはご軽装で、にわかに彼の廬をお訪いになるとは、そも、いかなる理ですか」
「いや、それについては、大いにおはなし申したい。まず、そこらの岩へでもおかけなさい。予も、席をいただく」と、路傍の岩に腰をおろして、
「――自分が、孔明を尋ねてきたのは、国を治め民を安んずる道を問わんがためで、そのほかには何もない」と、いった。
すると、崔州平は、大いに笑って、
「善いことですな。けれど、あなたは治乱の道理を知らないとみえる」
「或いは――然らん。ねがわくは治乱の道を、説いて聞かせたまえ」
「山村の一儒生が烏滸なる言とお怒りなくば、一言申してみましょう。――一体、治乱とは、この世の二つの相かまた一相か。古から観るに、治きわまれば乱を生じ、乱きわまるとき治に入ること、申すもおろかでありますが、現代はいかにというに、光武の治より今にいたるまで二百余年、平和をつづけて、近頃ようやく、地に干戈の音、雲に戦鼓の響き、いわゆる乱に入り始めたものではありませんか」
「そうです。……乱兆が見え始めてからここ二十年にわたるでしょう」