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さんごくし

三国志

吉川 英治

06 孔明の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 161,356 字 · 323 页

青空文庫

「ご辺が周倉といわれるか。何故にそう卑下めさるか。まず地を立ち給え」と、扶け起した。

周倉は立ったが、なお、自身をふかく恥じるもののように、

「諸州大乱の折、黄巾軍に属して、しばしば戦場でおすがたを見かけたことがありました。賊乱平定ののちも、前科のため、山林にかくれて、ついに盗賊の群れに生き、いまかくの如き境遇をもって、お目にかかることは、身を恨みとも思い、天にたいしては、天の賜と、有難く思います。将軍どうかこの馬骨を、お拾いください、お救い下さい」

「拾えとは? 救えとは?」

「将軍に仕えるなら、ご馬前の一走卒でも結構です。邪道を脱して、正道に生きかえりたいのでござる」

「ああ、ご辺は善性の人だ」

「おねがいです。然るうえは、死すともいといません」

「が、大勢の手下は、どうするか」

「つねに皆、将軍の名を聞いて、てまえ同様お慕いしています。自分が従うてゆけば、共々、お手についてゆきたい希望にござりまする」

「待ちたまえ、ご簾中に伺ってみるから」

関羽は静かに車のそばへ寄って、二夫人の意をたずねてみた。

「妾たちは、女子のこと、将軍の胸ひとつで……」と、甘夫人はいったが、しかしここへ来るまでの間、たとえば東嶺の廖化などでも、山賊を従えては故主のお名にかかわろう――と、かたく断った例もあるし、世上のきこえがどんなものであろ