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ことうのおに
孤島の鬼
江戸川 乱歩
「朝日」博文館、1929(昭和4)年1月号~1930(昭和5)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 页
上気した頬が美しく輝き、長いまつげに覆われた目が、なまめかしく見えた。「この間巣鴨では、何だか恥かしくて云えなんだけれど、僕は君にお詫びしなければならないのです。君が許してくれるかどうか分らぬ程、僕は済まぬことをしているんです。でも、それは、僕の情熱がさせた業、つまり僕が君を他人にとられたくなかったのです。イヤ、こんな自分勝手なことを云うと、君はいつもの様に怒るだろうけれど、君にだって僕の真剣な気持ちは分っていてくれる筈だ。僕はそうしないではいられなかったのです。……君は怒っているでしょう。ね、そうでしょう」
「あなたは初代さんのことを云っているのですか」
私はぶっきら棒に聞き返した。
「そうです。僕は君とあの人とのことが、ねたましくて堪えられなかったのです、それまでは、仮令君は僕の心持を本当に理解して呉れぬにもせよ、少くとも君の心は他人のものではなかった。それが、初代さんと云うものが君の前に現われてから、君の態度が一変してしまった。覚えていますか、もう先々月になりますね。一緒に帝劇を見物した夜のことを。僕は君のあの絶えず幻を追っているような眼の色を見るに堪えなかった。