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ことうのおに
孤島の鬼
江戸川 乱歩
「朝日」博文館、1929(昭和4)年1月号~1930(昭和5)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 页
「そんな云い方があるもんですか」私はもう泣き声になっていた。「初代さんの方でも、僕をあんなに思っていてくれたればこそ、あの人を失った今、僕の悲しみは幾倍するのです。そんな云い方ってあるもんですか。あなたは求婚に失敗したものだから、それ丈けでは、あきたりないで、その上、その上」
だが、私はさすがに、その次の言葉を云いよどんだ。
「エ、何ですって。ああ、やっぱりそうだった。君は疑っているね。そうでしょう。僕に恐ろしい嫌疑をかけている」
私はいきなりワッと泣き出して、涙の下から途切れ途切れに叫んだ。
「僕はあなたを殺してしまい度い。殺し度い、殺し度い。本当のことを云って下さい。本当のことを云って下さい」
「ああ、僕は本当に済まないことをした」諸戸は再び私の手をとってそれを静かにさすりながら、「恋人を失った人の悲しみが、こんなだとは思わなんだ。だが、蓑浦君、僕は決して嘘は云わない。それはとんだ間違いですよ。いくらなんだって、僕は人殺しの出来る柄じゃない」
「じゃ、どうしてあんな気味の悪い爺さんがここの家へ出入りしているんです。あれは初代さんの見た爺さんです。あの爺さんが現われてから間もなく初代さんが殺されてしまったんです。