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ことうのおに

孤島の鬼

江戸川 乱歩

「朝日」博文館、1929(昭和4)年1月号~1930(昭和5)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 页

青空文庫

不可能の裏側を覗いて見ると、案外つまらない手品の種がかくされているものだから」

諸戸も手品という言葉を使った。私は深山木も嘗つて同じ様な比喩を用いたことを思い合わせて、一層諸戸の判断を信頼する気持になった。

「非常に馬鹿馬鹿しいことです。(深山木も同じことを云った)余り馬鹿馬鹿しい想像なので、僕は容易に信じられなんだ。一つ丈けでは信じられなんだ。だが、深山木さんの事件が起ったので、やっぱり僕の想像が当っていたことが、確められたのです。馬鹿馬鹿しいというのはね、偽瞞の方法が子供だましみたいだということで。だが、そのやり方は実にずば抜けて大胆不敵なのです。それが為に、この犯罪人は却って安全であったとも云い得る。サア何と云っていいかこの事件には一寸人間世界では想像出来ない程の、醜い、残忍な、野獣性がひそんでいる。一見馬鹿馬鹿しい様ではあるが、人間の智恵でなくて悪魔の智恵でなければ、考え出せない種類の犯罪なのです」

諸戸はやや興奮して、さも憎々しげに喋って来たが、一寸押黙って、じっと私の目を覗き込んだ。私はその時、彼の目の中には、いつもの愛撫の表情が失せて、深い恐怖の色が漂っているのを感じた。