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ことうのおに

孤島の鬼

江戸川 乱歩

「朝日」博文館、1929(昭和4)年1月号~1930(昭和5)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 页

青空文庫

後に思い当ったことであるが、私は何となく、そんな風に感じないではいられなかった。

「例えばね、代数の問題を解く時に、いくらやって見ても解けない。一晩かかっても書きつぶしの紙がふえるばかりだ。これは不可能な問題に違いないと思うね。だが、どうかした拍子に、同じ問題をまるで違った方角から考えて見ると、ヒョッコリ、何の雑作もなく解けることがある。それが解けないというのは、謂わば呪文にかかっているんですね。思考力の盲点といった様なものに禍されているんですね。初代さんの事件でも、この見方を全く換えてみるということが必要だったと思う。あの場合、出入口が全然なかったというのは、屋外からの出入口がなかったということです。戸締りも完全だったし、庭に足跡もなかったし、天井も同様、縁の下へは外部から這入れない様に網が張ってあった。つまり外から入る箇所は全くなかった。この『外から』という考え方が禍したのですよ。犯人は外から這入って、外へ出るものという先入主がいけなかったのですよ」

学者の諸戸は、変に思わせぶりな、学問的な物の云い方をした。私は彼の意味がいくらか分った様でもあり、又まるで見当がつかぬ様でもあり、あっけにとられた形で、併し非常な興味を以て聞入っていた。