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ことうのおに

孤島の鬼

江戸川 乱歩

「朝日」博文館、1929(昭和4)年1月号~1930(昭和5)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 页

青空文庫

(中略)

父も母もなく、牢屋の様な土蔵におしこめられて、生れてから一度も、外の広い所へ出たことがないという「不幸」だけでも、悲しくて悲しくて、死んでしまいたい程ですのに、近頃では、その外に、吉ちゃんがいやないやなことをしますので、時々、吉ちゃんを絞め殺してやろうかと思うことがあります。吉ちゃんが死ねば、きっと秀ちゃんも一しょに死んでしまいますでしょうから。

ある時、本当に吉ちゃんの首をしめて、吉ちゃんが死に相になったことがありますから、そのことを書きます。

ある晩寝ています時、吉ちゃんが、百足が半分にちぎられた時の様に、本当に、無茶苦茶にはね廻りました。あんまりひどくあばれるので、病気になったのかと思った位です。秀ちゃんが好きで好きで仕様がないと云って、秀ちゃんの首や胸をしめつけたり、足をねじまげたり、顔を重ねたりして、無茶苦茶にもがき廻るのです。そして(中略)私はゾッとする程汚い嫌な気持がしました。そして、吉ちゃんが、憎らしくて憎らしくてたまらない様になりました。それで、私は本当に殺すつもりで、ワッと泣き出して、吉ちゃんの首を、二つの手で、グングン締めつけました。