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ことうのおに
孤島の鬼
江戸川 乱歩
「朝日」博文館、1929(昭和4)年1月号~1930(昭和5)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 页
思い違いや偶然の符合にしては、三人の見た景色が、余りに一致し過ぎているじゃないか。初代さんは、牛の寝た形の岬を見た。城の様な廃屋を見た。壁のはげ落ちた大きな土蔵を見た。双生児も、牛の形の岬も見た。そして、彼等は大きな土蔵に住んでいた。それはどちらも、僕の育った家の景色にピッタリと一致しているのだ。しかし、この三人は別の方面でも不思議なつながりを持っている。僕に初代さんと結婚することを強要したからには、僕の父は初代さんを知っていたに相違ない。その初代さんの下手人を探偵した深山木氏が、双生児の日記を持っていた所を見ると、初代さんの事件と双生児との間には、直接か間接か、いずれにもしろ何かのひっかかりがなければならぬ。しかも、その双生児は、僕の父の家に住んでいるとかしか考えられないのだ。つまり我々三人は(その一人は双生児だから、正しく云えば四人だが)目に見えぬ悪魔の手にあやつられた、哀れな人形でしかないのだ。そして、恐ろしい邪推をすれば、その悪魔の手の持主は、外ならぬ僕の父と称する人物であるかも知れないのだよ」
諸戸はそう云って、恐怖に満ちた表情で、丁度怪談を聞いている子供がする様に、ソッとうしろを振返るのであった。