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ことうのおに
孤島の鬼
江戸川 乱歩
「朝日」博文館、1929(昭和4)年1月号~1930(昭和5)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 页
分ったかな。老人の云うことに間違いはない。用心しなさるがよい」
老人はなおも、諄々として諸戸屋敷の恐怖を説くのであったが、彼の口ぶりは何となく、私達も、十年以前の丈五郎の従兄弟という人と、同じ運命に陥るのだ、用心せよ、と云わぬばかりであった。まさかそんな馬鹿なことがと思う一方では、都での三重の人殺しの手並を知っている私は、若しやこの老人の不吉な言葉が讖を為すのではあるまいかと、いやな予感に、目の先が暗くなって、ゾッと身震いを感じるのであった。
さて、その三日の間、当の諸戸道雄はどうしていたかと云うと、私達は、毎晩枕を並べて寝たが、彼は妙に無口であった。口に出して喋るには、心の苦悶が余りに生々し過ぎたのかも知れない。昼間も、彼は私とは別になって、どこかの部屋で、終日傴僂の父親と睨み合っているらしかった。長い用談をすませて、私達の部屋へ帰って来る度にゲッソリと、窶れが見え、青ざめた顔に、目ばかりが血走っていた。そして、ムッツリと黙り込んで、私が何を尋ねても、ろくろく返事もしないのだ。
だが、三日目の夜、遂に耐え難くなったのか、彼はむずかった子供みたいに蒲団の上をゴロゴロ転りながら、こんなことを口走った。